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 今日は一発決めよう!

 人生の中で(大袈裟!)「今日はひとつキメてしまおう」なんて日があります。そんな時は自然体で迎えるか、それなりな気構えを持って向かうかは人それぞれでしょうが、やはり普段とは違った「何か」が必要な気がします。たとえそれが人生の一大事ではなくても、そんな日はやっぱり元気溌剌といきたいものです。「今日は一発ピシっとキメよう」、そんな時にはこのDavid Robertsのアルバムを朝から聞きましょう。
 いきなりのJeff Porcaroのバスドラのキメに、それだけでイッてしまいそうな(笑)1曲目の<All in the Name of Love>。華麗にリフを奏でるSteve Lukather のギター、David Fosterもお得意のノリで生ピアノでビートを刻み、サビではBill ChamplinTom Kellyなどによるコーラスが決まり、中間部のソロ・パートはしっかりと転調するという、まさに典型的なL.A. Rockです。ここまでお約束のような様式美を聞かせてくれると、何の心配もなく安心できます(笑)。この曲や5曲目の<She's Still Mine>などは、その元気を分けてもらえそうなので、平日の昼間にぜひ聞きたいものです。本家TOTOでのプレイを彷彿とさせるLukeのギター・ソロが何とも元気良くて聞き物です。続く<Too Good Last>はミディアム・テンポの佳作。先の2曲以外は全体にミディアム調のものが多いです。この曲はNielsen-Peasonが名盤『Blind Luck』でカバーしています。他にもDianna RossやRamsey Lewisなども、このアルバム収録曲を取り上げています。収録曲の全てをD.Roberts自身が手がけていることを考えると、彼のコンポーザーとしての才能はとても魅力的です。全体としてはTOTO/AIRPLAYサウンドのお洒落なボーカル・アルバムって感じでしょうか。
 8曲目<Anywhere You Run To>のギター・ソロは御大Jay Graydonが担当。彼のソロの中でも名演の一つと言っても良いのではないでしょうか。Jay はこのアルバムではExective Producerとしてクレジットされています。6曲目の<Wrong Side of the Tracks>や9曲目<Never Gonna Let You Go>のLukeのソロだってとってもGood。ポッと出てきた新人アーティストのデビュー・アルバムって感じがまるでしないほど、みんな実に良い仕事していますよ。
 「今日こそは憧れのあの人とキメよう...」なんて下心タップリの場にお薦めなのは、オーケストラ・アレンジが何とも豪華な<Midnight Rendezvous>です。こんな曲を聴きながら、お台場のホテル日航東京のラウンジでレインボーブリッジの夜景を眺めていれば、奇跡も起きるかもしれません。そういえばこのホテルが96年に開業する際のキャンペーンにJoseph Williamsの曲を使っていました。当時たまたまこのホテルに連絡をしていた時に、「しばらくお待ちください」曲に I Belive in Heros〜 なんて聞こえてきたもので、思わず(知っているにもかかわらず)「これは誰の曲ですか」などと尋ねてしまい、相手が「えええっと...、Joseph Williams という人で、TOTOというアメリカのロック・バンドの元のボーカリストの曲で...」などと真面目な口調で広報用資料を読み上げだしたのには、思わず苦笑してしまいました。
 ところで世の中には一発屋と言われている人がいます。特にAOR系のアーティストにはそんな人が多いような気がします。この人もそんな一人。カナダ出身の彼は当時23歳。まさに元気一杯の新人アーティストでした。時はAOR全盛期、このアルバムをプロデュースしたのはGreg Mathiesonで、レコーディングに参加したミュージシャンも豪華で当時のフリーク達が放っておくはずがありません。「凄い新人が出た!」と話題騒然でしたが、このアルバム以降の活動はまったく不明です。元気一杯の楽曲に、目一杯の一発屋。「今日こそは一発」なんて時には、なんとも相応しいアルバムじゃないですか。AORの名盤の1枚です。





 David Roberts/All Dressed up ... (1982年)
 
 まだ時代のRock系AOR(?)の代表作。モロTOTOサウンドは没個性的などとの批判をよそに、そのエネルギッシュな雰囲気に、個人的には大推薦アルバムです。



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