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 冬のお出かけ、タバコの煙が目にしみない!?。

 私は煙草を吸います。世の中喫煙者にはだんだんと肩身が狭くなっていますが、自分の吸っている煙が赤の他人の健康を害していると言うのなら、そりゃ遠慮すべきでしょうが、誰にも迷惑をかけない場所でなら、国が認めた嗜好品なのだから堂々と吸っていたい.....なんてインターネットを通じて宣言してる場合でなく、本題っと(笑)....。
 煙草の味って、まさに煙そのものにある訳で、それは視覚でも楽しむものなのだそうです。真っ暗闇で吸っていても、確かにニコチンやらタールやらの有害成分は体内に吸い込まれているのですが、何だか味気ない....そんな経験はありませんか?。たとえ明るい場所でも、風の強い屋外などで吸っていてると、吐き出した煙は瞬く間に風に流され本当に気休め程度しかその味は楽しめません。空っ風が吹きすさぶ、土埃舞う冬の日に出かける時など、歩きながら吸おうと思っても風に煽られ煙草はどんどん短くなるし、吐き出した煙もまるでエクスプラズマのように口から白いものが風にゆられて消えていきます。そんな時って何だか虚しさみたいなものを感じてしまいます。そんな時に心に浮かぶのは、このアルバムに収録されている<Bell Bottom Blues>なのです。
 Eric Claptonがデラニー&ボニーにいたメンバーと匿名で組んだバンドのデレク&ザ・ドミノス。その唯一にして不滅の名盤『レイラ』は、まさに虚しさ一杯のアルバムです。このアルバムが発表された時、私はまだ小学生!。長兄もいない私は当然リアルタイムでは聴いていません。それでも洋楽には興味があったので、AMラジオから流れてくるタイトル曲くらいは知っていましたが、さすがにアルバムの収録曲まではチェックが行き届きません。それから数年後、中学校の卒業式の後でクラスメイト数人と友人宅へ行って卒業謝恩会の二次会をした時に、その友人の家でこのアルバムを聴かせてもらいました。それ以来毎年3月頃になると、このアルバムが聞きたくなります。もちろんそんな当時から喫煙の習慣があったわけではありませんが(当然!)、成人後のちょうどそんな季節のある日、何気なく歩きながらタバコを吸っていて、もうすぐ卒業式のシーズンだなぁなんて考えていたら、気づくと「Bell Bottom Blues〜」なんて口ずさんでいたんです。あらあら、いつまで経っても記憶は残っているもんですね。懐かしくて胸がキュッとなっちゃいました。ってな訳で私の中では「冬(卒業式)=外で吸うタバコ=レイラ」って図式が出来あがっちゃいました。
 さてこのアルバムは、クラプトンの当時の恋人(レイラ嬢)との不倫(彼女は何とGeorge Harrison夫人)を悲しくも堂々と綴る、何とも不憫な作品集だったりします。かなわぬ思い、募る恋心....そりゃ聞いてる方も切なくなって当然ですね。1曲目の<I Looked Away><Anyday>、ちょっとおどけた感じのモロ・ブルース曲<Tell The Truth><Have You Ever Loved A Woman>、思いの丈を叫ぶ<Why Does Love Got to be So Sad>、ジミヘンの曲を取りあげたことでも話題になった<Little Wing>など実に悲しい名曲が続きます。そして不朽の名作のタイトル・ナンバー<Layla>。デュアン・オールマンとの競演が超話題となり、トリプル・ギターのお手本のように言われることの多いこの曲って、実に虚しい男の叫びなんです。不倫だとかドロドロの恋愛模様などとは無関係だった中学生の私には、そんな本当のメッセージは届きませんでしたが、「卒業」という嬉しくも有りあり悲しくもある、何やら切ない気持ちになっていた心に、何か引っかかるものがあったんでしょうね。後半のピアノ・チューンがまた格好いいです。ラジオなどではこの後半部分がよくカットされてしまいますが、そんなの暴挙は絶対に許せません!(笑)。
 「今」に追われることの多くなり、止まったような時間を過ごすことの少なくなった今、たまにはタバコの煙がゆらゆらと立ち昇るのを見つめて、生まれてはまた消える、諸行無常の人生を思う....最近懲りだした赤ワインを揺らしながら......たまにはそんなことをしてみたいものです。え!、冬のお出かけのテーマはどこいったかって?。う〜ん、煙と一緒に風に流してくださいな(汗)。



 Derek and The Dominos
 / Layla and Other Assorted Love Songs
(1970年)
 
 アンプラグドなECしか知らない人がいるなんて、とっても信じられないけれど、世代を超えたミュージシャンになったということを喜びましょう。古臭いの一言で片付けるのは簡単だけど、この渋さ・臭さが彼の原点だということは、絶対に知っておいてください。



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