Crossover/Fusion 爽快サマーフュージョン傑作選 2001 まるで熱帯地域のような気候の今年の夏。ひと心地ついて思考回路も復活気味になったところで、心地良い夏を軽快に過ごすお供に最適なフュージョン・アルバムをご紹介しましょう。ついでに衝撃の暴露話もご紹介(^^;;)。(2001/07/28 update) |
![]() Jeff Lorber /The Definitive Collection (2000年) ■いきなり反則気味のセレクションから。マルチ・キーボーディストでプロデューサーとして大活躍のJeff Loeber。2000年にリリースされたARISTA時代のアルバムからのコンピレーションです。彼の絶頂期といえる時代の、いずれ劣らぬ名盤からのセレクション。『Water Sign』(79年)、『Wizard Island』(80年)、『Galaxian』(81年)、『It's A Fact』(82年)、『In The Heat of the Night』(84年)、『Step By Step』(85年)。まるで夢のようです。 彼のサウンドの特徴である軽いタッチのピアノ・プレイに絡むファンキーなリズムと、多彩なサウンド・バリエーションが堪能できます。さらに親しみやすいメロディ・ラインと分かりやすい曲構成という美味しい時期のFusionサウンドの醍醐味を満喫できます。未CD化の音源も含まれているこのアルバムは、初めて彼の作品を聞くという人への入門編としても、昔からのファンもとりあえずの1枚としてもお薦めです。軽く聞き流せるけれど実は超テク演奏ビシバシという、時代の生んだ宝箱みたいな作品集です。 |
Dan Siegel/S.t (1982年) ■L.A.フュージョンの代表選手のように紹介されることの多いこのアルバムですが、実は結構亜流のテイストだと思います。バックにA.Laboriel、J.Robinson、P.Jackson,Jr.,、Larry Carltonなど有名スタジオ・ミュージシャンらが大挙して参加しているものの、正直彼らの特徴的なプレイはそれほど聞くことはできません。それくらいメインのマルチ・キーボーディストのD.Siegel節が炸裂しているということでしょう。正直安っぽいシンセ・サウンドの曲もあるので、リアルタイムでこのアルバムを聞いていない人には、聞きやすいメロディ・ラインとともに特徴の薄いイージー・リスニング的な印象を与えてしまうのかもしれません。でもそれほど軽やかなタッチの曲で溢れています。 98年になるまで未CD化でした。根強いファンに支持されていたもののなかなか陽の目をみることなく、当時は待望のCD化として話題になりました。オリジナルのマスタリングが何とBernie Grundmanで、CDで聞いてもアナログな優しさに溢れているのは、さすがって感じです。 |
![]() Lee Ritenour /in RIO (1979年) ■幼少の頃からブラジル音楽に親しんでいたというRitの満を持して制作した全てガット・ギターを使用したアルバム。彼のデビュー時のギブソン335のセミ・アコースティック・ギターに親しんだ当時のファンにすれば、いきなり全編アコギを使うって、企画物かななんて思ったものでした。ところがこのアルバムはリオ、ロス、NYとそれぞれ現地のミュージシャンを中心に起用するほど凝りに凝った内容で安直なイージー・リスニングにしておくには勿体無いほど充実しています。ブラジル音楽といえば○○の一つ覚えのように浮かぶアントニオ・カルロス・ビジョンという人。Rit自身もかなり聞き込んでいたらしい。恐妻家で知られる彼ですが(^^;;)、奥さんがブラジル人ということもあり、まさに入魂の1枚だと言えるでしょう。 収められている曲はいずれもギタリストとしてのRitの魅力に溢れた優れた作品ばかり。時代のFusion名盤に挙げてもよいでしょう。アコースティックなギター・サウンドはブラジリアン・テイストのせいもあるのか実にリゾートな雰囲気を漂わせていて、この時期の必需品としてお薦めです。 |
![]() Lee Ritenour /Friendship (1978年) ■Rit衝撃のダイレクト・カッティング・シリーズの最終編。当時アナログ録音しか存在していなかった時代に、演奏・録音・レコード原盤へのカッッティングまでの制作工程を一気に行うという無謀と言えるほどの手法で、最高水準の音質再生を目指して行われた作品づくりは、時代のCrossover/Fusionサウンドのもつエネルギーが感じられます。E.Watts、D.Grusin、A.Laboriel、S.Forman、S.Gadd、D.GrusinらLAの強力ミュージシャン達による一発録り...究極の緊張感ととてつもないダイナミズム...そんな奇跡の瞬間が今聞いても輝いているように思えます。S.Formanによるクリスタルなパーカッションが実に効果的で、アルバム全体に響く透明感と奥行感が真夏のウインド・ベルのようで実に爽やかです。 こんなサウンドに親しんできたリアルタイム派が、今のスムース・ジャズのようなサウンドに批判的になってしまうのは、実際に聞いていただければ一発でご理解いただけるものと思います。意固地なジャズ・ファンには批判されても、今のスムース・ジャズ・ファンには文句は言わせませんぜ(^^;;)。 |
![]() Full Moon /Featuring Neil Larsen & Buzz Feiten (1982年) ■AORな人達からも多大な支持を受けている彼らですが、実際はFuionな人達だと思います(Niel本人に言わせればJazzミュージシャンなんだそうですが...)。アルバム・ジャケットに写る暑苦しい風貌の野郎共が奏でるサウンドは汗臭く埃っぽいマインドだけで、テイストは実に爽やか。大顔で恥ずかしがりやのBuzzyのボーカルは優しさよりもか弱さを感じてしまうほど繊細で、彼の奏でるファズとエコーたっぷりのギター・サウンドは透明感タップリ。一方のNielの独特なオルガン・サウンドは、これまた奥行感を十分に感じさせるもので、いずれも際立った特徴をもって時代のメインストリームにいたといえます。 当時のドライビング・サウンドの必需品として海だ山だとお世話になった方も多いと思います。真夏の陽射しが差し込む車内のカー・オーディオで聞く彼らのサウンド...あぁ、良い時代だったなと感傷に浸る私だったりします(^^;;)。こんなバンドって二度と出てこないでしょうね。 |
![]() Willie Bobo /BOBO (1979年) ■ラテン・パーカッション奏者として60年代から活躍している大御所Boboのメジャー・デビュー盤。ボーカル・チューンが多いものの全編に匂うラテンの香りはまさに夏全開のイメージ。こんな暑い時期にしか聞くことのできないアルバムです。CrusadersやE.W.&F.などのサポート・メンバーとして有名なR.Bautistaがゲスト参加している以外はBoboの旧知のブラジルのメンバーで固められており、変にスレていない純粋で一途なラテン・サウンドが楽しめます。 メジャー・リリースでのセールスを意識してかDave Grusinの曲や、暑苦しさではこちらも負けていない(笑)ジノ・ヴァネリの曲を取り上げるなど、苦心の選曲の跡が見られる。オープニングで聞けるバチやんの超高速ミジン切りギター・カッティングが最高!。ラテン・パーカッションとホーン・セクション、多彩なパーカッション・プレイ...この曲が一番のお薦めです。蝉の声が聞こえてくるようなアルバムです。 |
![]() 高中正義 /Seychelles (1976年) ■オープニングのアコースティック・ギターからいきなりリゾート感覚に浸れる、高中のソロ・デビュー盤。サディスティック・ミカ・バンド、サディスティックスなどの活動を経て、日本のクロスオーヴァー/フュージョンを代表するギタリストとして大活躍し、遊び心満載のサウンドは今でもファンは多いはずです。どこか日本の夏を感じさせる効果をもたせるサウンド・メイクは、とかく洋楽にかぶれがちな日本のミュージシャンが多い中にあって好感がもてます。お薦めは@<Oh! Tengo Suerte>と名曲C<憧れのセイシェル諸島>。トロピカルな雰囲気一杯の前半とロック・チューンで激しくせまる後半のバランスが絶妙です。 最近、フっとしたきっかけで@のパクリの元ネタを発見!。あまりのクリソツ振りに思わず仰け反ってしまいました。いずれも好きで良く聞いていた曲だったのですが、まさか元ネタが70年代の大御所ブリテッシュ・ロック・バンドの曲だったとは...、全然結びつかずに20年以上気付かずにいましたとさ。いずれにせよ(?)、水芭蕉よりも夏がくれば引っ張りだしてくるアルバムであることには間違いないようです。 |
![]() 角松敏生 /She is A Lady (1987年) ■彼の音楽性の中に、歌モノ以外への指向性はデビュー当時から確実に存在していたと思う。同じ大学で私が彼と過ごした数年間でみた彼の音楽性の中に、達郎などのシティ・ポップス感覚以外にLutherやR&Bなどのソウル...ダンス・ミュージックへの憧れとともに、彼が時代のクロス・オーヴァー・サウンドへ傾倒していたことは間違いの無い事実だ。不安を抱えたままのデビュー数年間。事務所移籍後にようやく得た自分の作品への発言権の中で、このアルバムのようなインスト・アルバム制作を企画することも自然の流れだったし、ある意味ではプロとして音楽やっていく以上、一度はやってみたかったことが実現した喜びの瞬間でもあったことだろう。 そんなアルバムから聞こえてくるサウンドは、ナンパな角松のイメージにぴったりの、多少理屈っぽいところはあるものの女の子の気を引くためなら泳げなくたってサーフィンしちゃう位の気合を感じさせてくれるものになっています(????)。いや、素直に格好良いです。時代的に日本のフュージョン界が混迷していた時期だけに、実に貴重なインスト・アルバムとして随分と聞きこませていただきましたよ。あと、このアルバムがリリースされた時のツアーで呼んでくれたJerry HeyとLarry Williamsのライブ・パフォーマンスが見れたこと...感謝しております。 |
![]() T-SQUARE / S.t. (2000年) ■T-Square最後のアルバム。あれ、今でもスクエアってあるんじゃないの...確かまだあるんだけれど、今のスクエアはたった二人のユニットで、バンドとしては最後って言ったほうが正しいかも...。 80年代から日本のフュージョン・シーンに確固たる地位を築いてきた名門バンドが、世紀をまたぐ最後の最後に辿りついたのは、実に軽やかでしなやかで、それでいてエモーショナルな抜群のフュージョン・サウンドだったと思います。数々のメンバーの変遷を経験したものの、このバンドの目指していた心根は変わらずにきていたと思います。このアルバムに収められている<Man On The Moon>を聞いていると、何故バンドを解体させなければならなかったのか疑問で一杯です。この曲はこんな季節に聞くにはめちゃくちゃ良いですよ。続く<ca et la>も、もっと評価されて良い曲だと思います。ラテン・フレイバーに溢れる<ALE-LEYAH-YAH>なども久し振りにドライブしながら聞きたい曲として私のお気に入りの1曲ですさらには夏の夕暮れ時にぜひ聞きたい<An Evening Glow>など、本当に粒の揃った素敵なアルバムだと思います。 |
■T-SQUAREの悲劇 このバンドは本当に数々のメンバー変遷を経験しています。デビュー当時のチェンジはともかくとしても、ギターの安藤さんが実質リーダーとして同じくフロントのサックスの伊東タケシとの2枚看板でバンドは有名になっていきました。ドラムに則武、ベースに須藤という若手の超テク・メンバーが加わりメンバーの質が安定してきた頃に、勢いに乗って伊東タケシはバンドを去りました。ある意味では伊東のワガママと私の目には写っていましたけど...。代わりに加入したのが本田雅人。彼の最先端の感性が、スクエア不動のF1のテーマ曲を生んだとも言えるでしょう。しかし売れ線突っ走りで、しかもそのあまりに尖がった曲調についていけなかったのが正直個人的なな感想です。 そして本田氏の脱退後に、新たなメンバーが当然のように補充され、ある意味では原点回帰のメロディアスなサウンドに戻りつつあった彼らに対して、どうしたことか、一部ファンが猛烈に反発したのです。スクエア関連のホームページのBBSで、大変な騒動になってしまったらしいです。そこでの目に余るやりとりにメンバー本人が怒りの書き込みしたため、事態は大変な混乱状態に陥ったそうです。こんな事態を重くみたプロダクションが、何を血迷ったかメンバー全員の解雇にふみきり、安藤=伊東のユニットとしてスクエアをリセットしてしまったのです。日本が誇る人気フュージョン・グループが実質解散に至ったというわけです。 はっきり言ってこのバンドのサウンドコンセプトを決めているのはプロデューサーですよ。それをメンバー個人に対して非難を集中させるなんて、騒ぎを起したファンは一体何様のつもりなのでしょう。メンバーが代わればテイストが代わって当然。気に入らなければ聞かなきゃ良いのに、可愛さ余って新メンバーを非難するなんて...。いや、日なんしたって構わないけれど、こんな騒ぎをまで起した、そのファン達の罪は重いですよ。 縁があって知り合えたベースの須藤さん、新加入のサックスの宮崎さん、いずれも本当に人間味溢れる素敵な方です。こんな騒動の煽りをくらって「無職」になっちゃったってことです(^^;;)。 現在のスクエアは、解雇したはずの則武さんを準メンバー扱いでライブなどを行っています。また本田氏なども交えて「with Friends」みたいなアルバムも制作したりしています。中途半端すぎますよ、こんな活動形態は。ファンとミュージシャン、プロダクションとミュージシャンの関係など、考えさせられることの多いエピソードだったと思います。でもね、こんな事態が起きたつたことは、どこの音楽雑誌でも紹介されなかったですよね。私だって聞き伝手で知り得たことなので、100%正確かと言われると確証はありません。ただ当らずとも遠からずってところだと思います。こんな騒ぎになった時期にリリースされたアルバムの出来が、あまりに良かっただけに残念でなりません。 |