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【社会】国益とは

 イラクへの米英軍の侵攻という21世紀になっても人類が繰り返した悲劇を見ていて、色々と感じることが多かった人もたくさんいると思う。戦争の愚かさは言うに及ばず、様々な覇権主義が渦巻く国際関係など、確かに考えることの多かった出来事だった。そんな中で私が考えた一つに、「果たして国益って何なんだろう」ということがあった。
 国益とは読んで字の如く国家の利益である。戦争は国と国の武力衝突だ。国が国の利益を脅かされる、または国の利益を拡大するために起すのが戦争だ。国際テロ組織を支援していると因縁をつけられた?イラクはほとんど君主制に近い軍事独裁政権により統治されていた国だ。フセイン大統領とその一派により牛耳られていた軍部・警察などによる恐怖政治だったという。そんな独裁者が「国益のために闘う!」などと言っても、それは決して国民のための利益ではなく自身の政権維持のための戦いだった。その証拠に連合軍が首都に侵攻した途端に政権首脳は一斉に姿を消した。守るべき国民を捨てて...。さらにそのことを一番知っていたのはイラク国民で、米英連合軍が攻め入った途端に投降した兵士が続出した。イラクの情報相は必至に否定したが、紛れも無い事実だったようだ。フセイン政権下でのイラクにおいての国益とはフセイン自身の利益だったのだ。
 翻って日本の国益とは何か。日本の政治を司っているのは自民党だ。つまり自民党と自民党支持者の利益こそが日本の国益になるという、恐ろしい構造が見えてこないだろうか。決して私は自民党政権の転覆を示唆しているのではない。私にとっては自民党だろうが民主党だろうが、いずれの党が政権を担っても構わないと思っている。真に国民全体の平和と安定と繁栄のために尽くしてくれるのであれば、どの政党が日本の舵取りをしてもよいと思っている。
 有事関連3法案が与野党合意という久し振りに見た離れ業で衆院を通過した。「国を守る」という、国益の最たる課題に対しての法的根拠がようやくできた歴史的な瞬間だった。ここで問題。守るべき国とは何なのかということ。国は決して体制側の人間のことではない。広く一般市民(国民)の生命と日々の生活と、それの維持と向上・繁栄にに必要な一切の財産・制度・社会インフラである。国益を守るとは、そんな国民(生活)を守ることだ。有事関連3法案の趣旨は、きっとそうであるだろうと勝手に期待している人達が大多数だろうと思う。けれど本当に国益を守れる法案かどうか、機会があれば一度きちっと検証しておくことが必要だと強く思う今日この頃です。何せ政治家は基本的に自分達の支持者のことしか考えていない人種ですからね。

 期せずしてイラク戦争をきっかけに国益について考えさせられた。国民生活を守るために国を統治していない国家が、世界にはまだいくつも存在している。日本は果たして真に国民生活を守るために体制が整えられているといえるだろうか。第二次大戦後の秩序をもって世界の体制としている国際社会。戦後の混乱のまま国家として真に自立したとは決して言えない日本の現在の体制。平和憲法をもち国際社会に貢献していると勘違いしているとしか言えない日本が、もしかしてそんな国家の中の一つに数えられないことだけを願って止まない。
(2003/05/17)



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