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【社会】経営者の資質

 以前の「会社は誰のもの」と内容が似ているかも...。
 年も新たになりテレビでは新春特別企画...みたいな番組のオンパレード。レギュラー番組も特別企画が多い中で、日曜日の朝の「サンデープロジェクト」でもそんな企画があった。「頑張れニッポン!」(笑)。実に分かりやすいですネ。で、その中での経営者○人へのアンケート結果に愕然。経営状態が芳しくない理由はとの問いに「経済環境の悪化」とか「消費低迷」を上げている人が多かった。バカじゃないの?。経済環境が良くて消費が好調なら、経営状態は良くなるの?。だったら経営者なんていらないじゃない。景気が悪くても収益を上げるために経営者がいるんでしょ。本気で答えているの?。あまりにアホらしくなってしまった。
 番組では企業規模の大小に関わらず、頑張っている経営者を紹介していた。そこには自分の理念を貫いて企業を経営している社長数名が紹介された。独自の技術をもっているとか、その分野でのナンバー・ワンになるとかは以前からも言い古された経営術だ。しかしその本当の意味を捉えている人が少ないということなのでしょう。例えば織物業界。構造不況の中で生産拠点が海外に流出して空洞化が著しい中で、独自の織機を作り生産者に供給しているメーカーの社長が登場した。ここでは独自のノウハウを元に世界でも類を見ない製品を開発したことに勝因があると見るのは簡単だ。織機メーカーとして生産者に莫大なコストダウンを実現させるためには、どんな織機が必要かと考えたところがポイントだと私は思う。何かを作る、何かのサービスを提供する、その対価として必要経費を引いた利益がその会社にもたらされる。経費を削って利益を確保するのは当然としても、モノやサービスそのものの質を低下させるほどの経費削減は本末転倒。かつて繊維業界が好調だった頃から、このメーカーはこの視点で製品開発に勤しんでいたという。世の中が不況になったとたんに、このメーカーの織機が俄然注目を浴びたという。世の中が厳しい時こそチャンスだとは良く言われる言葉だけれど、なるほど、こういうことを言うのですね。
 衣食住.....これにまつわるモノやサービスは永久に無くならない。また、そんな会社があればその会社を維持するための様々なサービスも永久に不滅だ。現在、産業として成り立っている業界の大部分は、これらに属するものかと思う。業界が無くならないのであれば多かれ少なかれそこには必ず需要が存在しているはずなので、後はそれぞれの企業規模に応じて、その需要を食い合う...これが企業間競争といわれるものだと思う。需要が拡大傾向にあれば各社とも右肩上がりで業績は伸張していくだろう。果たして需要が縮小していくなかでは、本当の意味での需要者のニーズに応えてくれる企業だけが、よの多くの需要を取り込む、すなわち業績を上げられるという構造なのだ。もちろん好景気に支えられた伸びは期待できないだろうが、だからと言って「景気が悪いから」の一言で業績不信の原因を語られては、そんな輩に経営を預けている会社の従業員は堪ったものではない。
 世界同時不況の今、企業の経営者に最も必要な資質は自社の顧客なり業界の需要者のニーズをどれだけ把握できるかということだろう。そしてそれに応えられる自社の最も効率よく提供できるモノやサービスは何かを見つめること。業績が悪化している企業はそれが無いのだろう。いゃ、本当に無いのだろうか。実は気づいていないだけなのではないか。そんな気がする。ニーズが掴めないか、自社の特徴を見出せないか、ほとんどはそのいずれかだと信じたい。もしそんなモノやサービスが本当に無ければ、企業は存続しえないものと覚悟すべきだ。身近な例でいえば、タバコ屋は零細企業(というか商店)の代名詞かと思うけれど、世の中にごまんとあるタバコ屋はお互いに競合しながらも数多く存在し、存続している。世の中不況だから、世の中禁煙ブームだからと嘆いていても、それでも確固たる需要者は存在している。であれば、そんな需要者を一人でも多く取り込む努力無しには、婆ちゃんの小遣い稼ぎすら難しくなるだろう。そこにお客がいるかぎり商売はできる。規模が大きくて商店ではなく企業と呼ばれている組織も同じだ。不況だ不景気だと嘆く暇があれば、そこにいる顧客と堂々と対峙して、そのニーズを掘り起こすことに注力せよ。社内美化だ勤怠管理強化だと非生産的な業務に現を抜かせば、一般社員の何倍もの報酬を手にできる役員など不要だ。100歩譲って社員の勤労意欲を向上させる施策を考えていてください。
 こんな時代だからこそ、経営者の資質が問われ試されているのだと深く心に刻むべし。チャレンジする機会を与えられているのだと楽しむ位の気概を、この番組では見せ付けられたような気がします。
(2001/01/06)


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