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【スポーツ】頑張れアイスバックス

 先日、栃木県にある霧降アイスアリーナで行われたアイスホッケーのゲームを見てきました。場所は日光ということで、日光アイスバックスと、チームの解散が決まっている雪印との戦いでした。アイスホッケーのゲームは今まで見たことはありませんでした。たまにテレビ放送などがあっても、待ってましたとチャンネルを合わせることもなかったのですが、生で観戦できるチャンスなどなかなか無いので、良い機会だと行ったのですが、見ればやはりその興奮は相当なものでした。はじけるパックのスピード感、大男同士がぶつかりあう迫力、細かなスティック捌きのテクニック、パックを繋ぎ合うチーム・プレイ...見所は多かったです。初めのうちはパックがどこにあるのかも分からずキョロキョロする場面も多かったのですが、第2ピリオドが終わる頃には目も慣れてきて、またルールの概要も把握できて、だんだんとその魅力にのめり込んでいきました。

 アイスバックスのメインスポンサーは古河電工。99年1月にアイスホッケー部の廃部を発表しました。チーム運営に必要とされる3億円弱の資金拠出が難しいというのがその理由です。以降チーム運営は有限会社栃木アイスホッケークラブに引き継がれましたが、こちらも今シーズンを限りに運営から撤退することが決まっています。もともと日光はアイスホッケーの盛んな土地柄ということで、同地をホームとするアイスバックスは地元を中心としてかなり人気のあるチームです。またプロゴルファーの福嶋晃子選手が個人的にも応援しているということもあり、話題豊富なチームでした。メイン・スポンサー撤退の後には日光猿軍団をはじめとして日光市、栃木計算センター(TKC)、日野自動車、日立、日本旅行、ANAなどがサポートしていましたが、いかんせん拠出金が少なく、そんなスポンサー収入は猿軍団が5000万円(未確認)で残りは合わせても3000万円にも満たないとのこと。さらには選手関係者を中心に市民からの寄付金などで、さらに2000万円もの資金が集まったものの、すべて合わせてもチーム運営に必要な資金の半分程度でしかありません。
 このような資金調達に走り回っていたのがゼネラル・マネージャーの高橋さん。今年の1月にTBS系列のスポーツ・ドキュメンタリー番組で特集が組まれていたので、ご覧になった方もいるかもしれませんが、彼は昨年の8月に膵臓ガンの告知を受け、余命1年と宣告されたのです。そんな体をおしてチーム再建に走り回っています。

 今回ゲーム観戦に誘ってくれた人は、この高橋さんの知り合いということで、会場に着いた時に私達は高橋さんご本人に出迎えられてしまいました。スポーツ新聞などでアイスバックスの記事の記憶が片隅にしか無かった私ですから、「あ、この人だ」と分かったほどの方。とても面倒見のよさそうな方で、とても大病を患っているようには見えませんでした。突然の訪問にもイヤな顔をせずに応対してくれました。たまたまその日に他所でいただいて車に積んであった鶏卵90個( ! )を差し入れた時に、驚きながらも喜んでいただいた姿は、何とも人の良い親父風で好感がもてました(ちなみに高橋さんは居酒屋を経営していて業務用の冷蔵庫があるとのことで、決して迷惑では無かったと思っていますが...)。このゲームには先週ハワイで行われたトーナメントに出場していた福嶋選手も応援に来ていました。結果的に福嶋選手らと同席して観戦することとなったのですが、派手な態度もなく、実に真摯な態度でリンクに熱い眼差しを送り続ける福嶋選手の姿も、普段のゴルフ場でみせているものと違っていて、こちらも大変好感がもてました。

 チーム存続の危機にみまわれているアイスバックスですが、スポンサーからの援助を元に非営利組織(NPO)化に、その道を模索しています。その趣旨はアイスホッケーを日光の文化として浸透させようというもの。スポーツチーム運営の新しい道です。アイスホッケーに限らず、バレーボール、バスケットボール、さらに国民的なスポーツの野球ですら、経済環境の停滞する中で、企業を中心としたスポーツは大きな転換期を迎えています。本当に好きな人が活動できる環境の整備、新しいスポーツに触れることのできる場の創出はとても大切なことだと思います。しかし文部省(新しい名称が分からない...汗)は市民スポーツの振興については的外れな施策しかだしていないし、企業も業績悪化を理由に、その意義を見つめ直すことなく支出を切りまくる。アイスバックスの高橋さん以外にも、こうした状況を打開すべく活動している人達は大勢いと思います。チームの自立した運営、そしてチーム存続の意義が広く認められれば、その道は開ける...いや、開けてほしいと心から思います。きっとスポーツに限らずあらゆる社会システムの不都合の解消は、企業や行政に頼らずわれわれ自身の手で行うことが、求められているのかもしれません。単に見守るだけでなく、こうした状況打開に向けて、自分でも何かできないかと思う今日この頃です。
(2001/02/24)


 



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