Back




【社会】 消費者金融の恐ろしい狙い

 久しぶりにゴールデンタイムにテレビを見た。土曜の夜の巨人戦ナイター中継。広告業界は世の景気とともに総じて不調だ。ナイター中継はかつての勢いを失っていて、いわゆる優良銘柄のスポンサーが少なくなっている。ステブレ枠(番組内にあるCMの局の持ち枠)だとは思うけれど、番宣(これも業界用語で他の番組の宣伝素材のこと)や消費者金融のCMが流されていた。そういえば深夜の時間帯にテレビをつけていると時々流されているCMだったけれど、それが消費者金融のものだとの認識が無かった。気づくとこれは恐ろしい内容だ。インディーズ風の女性アーティストと、まさに今風のバンドによるものの2種類が交互に流されていたが、ターゲットは明らかに若者。確か学生は利用できなかったはずだけれど、学生というよりも若年層を狙った利用勧誘ということか。別の消費者金融のCMで海外旅行に行きたい主婦が「へそくり」と偽って借りてくる(借りるシーンは出てみないけれど、明らかにお金を借りていることが象徴的にわかる)ものがある。いずれも血も凍るような戦略でありシーンである。
 だいたいこんな時間帯にこうしたCMが流されることに問題は無いだろうか。ある意味でのCM業界の規制緩和...なんて見方もあるけれど、ようは稼げる時間帯が売れなくなってきたため、消費者金融の業界に解禁したのだ。「ご利用は計画的に」なんてしらじらしいテロップ1枚で、悪魔に心を売った(ちょっといい過ぎかもしれないけれど)と言えるかもしれない。遊びたい盛りにお金が無い。お金がなければバイトでも仕事でもがむしゃらに働いて目一杯遊ぶ...これが若い時の生活パターン。それを、お金が無ければ借金しましょうだなんて...私には受け入れがたい生活の仕方だ。例えば大きな買い物をするとか、何か事業を始めるとか、一時に用立てできないお金を動かさなければならないためにローンを組むのとは根本的に違う。クレジットカードの審査も甘くなっていて、簡単な資格審査のみで数十万単位の与信が得られる。そんな数十万単位のお金を動かすための資金として消費者金融が利用されるって、あるべき姿なのだろうか。
 ナイター中継を見ていて、攻守交替のごとにこんなCMを見せられる。繰り返しの効果は意外と高い。効果も高いが費用も高い。こんな費用を負担できるスポンサーが少なくなっている...だからといって消費者金融に依存するTV局の姿勢は、正直疑問が残る。若年層と主婦をターゲットとした消費者金融の戦略は、世の必要悪を利用する悪魔の戦略かと敢えて言おう。明日入るお金を一時的に立て替えてもらっているのではない。入る当ての無いお金を「いつかは返せる」という見込みで金利付で借りているのだと、きちっと認識して利用してください。
(2001/08/18)


Back