【社会】自民党の詐欺的行為を忘れない 自民党の総裁選挙で「奇人」と呼ばれていた小泉氏が当選し、過日国会においても総理大臣に任命され、21世紀最初の新内閣が発足した。小泉氏自身もそうだし閣僚の顔ぶれも従来の自民党政権では見られなかった大胆かつ新鮮なものとなって内外の注目を浴びている。ここ数日の報道番組においても、その政策立案・実行力について様々な視点からとりざたされている。 国民の信託を得て国政にたずさわる議員の集まる国会において、野党が提出した森(前)内閣不信任案を否決したのは自民党をはじめとする与党3党。不信任案を否決するということは、与党挙げて森内閣を継続すべきだと声をあげたということ。にもかかわらず、まさにその舌の根も乾かぬうちに、当の森氏自身を自民党の総裁から解任したのだ。総裁選挙に森氏も立候補し、投票のうえで落選したとしても大きな「?」がつくのに、その選挙に立候補もしない人物を首班とする内閣を支持しておきながら、ほんの数ヶ月でその首を挿げ替える...とても尋常な思考力では判断不能な政治判断である。森氏自身の不評に危機感をもちつつも、政権正当としての既得権を守るための政治手法だということは分かるけれど、あまりにも国民をバカにして独善的な考え方だと言わざるをえない。政権選択をかけた総選挙...細川内閣成立以来、そんな選挙は一度も行われていない。気付くと自民党政権は復活し、その後も小渕氏の急逝というハプニングはあったものの幾代かの内閣成立にあたっては、真に国民の声を反映した内閣は一つもない。内閣とは国の代表でなければならない。国の代表は国民が選ばなければならない。これは民主主義の大原則だと信じている。ところがそんな原則が、今の日本の政治には適用されていない。その成立の経緯や顔ぶれはともかく、新しい内閣が成立したのなら、ただちに国民にその信任を問うべきだ。 自分達で信任した内閣を数ヶ月で首班ともども変えてしまうような政党が作った内閣。顔ぶれがどうであれ、政策およびその実行能力の如何を問わず、そんな内閣は信用できない。野党は直ちに不信任案を提出すべきだ。そして総選挙を実施して、国民にその信を問うべきだ。それが民主主義の手続きだ。マスコミも、その顔ぶれの新鮮さにまどわされ、そんな視点でこの新内閣をみている論評は皆無だ。緊急世論調査では内閣支持率が8割を超えているという数字をセンセーショナルに伝えている。受ける話題だけをタイムリーに伝え続ける...そんなのはマスコミではない。ジャーナリズムでも決して無い。ただの声の大きい情報屋だ。 さらにだらしないのは、こんな事態に指を咥えて沈黙している野党。同じ調査では、自民党の支持率は3割強と変わらぬまま、民主党の支持率が5%程度に落ち込んでいるという。当たり前だ。自民党には不信感をもちつつも民主党などに政権は任せられないと判断している国民が多いということ。確かに小泉氏をはじめとして新閣僚の田中氏、石原氏、竹中氏などには実際の政治の場での手腕を見てみたいとの期待感は私にもある。しかしその前に、こんな詐欺行為みたいな方法で作られた内閣には、不信感を抱かざるをえない。自民党の規律・手続きにそって選出されたのだけれど、国政の長としては、その経緯は絶対になっとくできない。できるだけ早期に総選挙を実施して国民の信を問うべきだ。それまではどんなことがあっても、現在の内閣は絶対に支持したくない。 (2001/04/29) |