【社会】著作物の再版制度維持には絶対反対!。 公正取引委員会が業界団体の圧力に屈して「当面存続」の方針を発表した。新聞や雑誌などマスコミ会社の言論野郎を相手の意見調整に、かなり言葉を選んでいるように思える。再版制度とは定価を定めて価格通りに商品を販売することを認めている制度で、独占禁止法など自由競争を阻害するあらゆる企業活動を規制する法令で除外される商品を定める制度である。公取委がまず「規制緩和を推進し、公正・自由な競争を促進する観点からは、再版制度を廃止すべきだ」との基本方針を明らかにしていることについては、大いに評価したい。一方で業界側が主張する価格維持と再版制度廃止の弊害については、まるで説得力が無い。書籍・雑誌、音楽CDの多様性の喪失、新聞の戸別配達制度の衰退、国民の知る権利の疎外...果たして価格維持とどういう関係があるというのだろうか。日本新聞協会の会長の意見が新聞に掲載されていた。「独禁法で合法と認められている著作物再版を公取委が規制緩和の対象としたこと自体が間違っている...」。なんという独善的な主張だろうか。規制緩和という言葉の意味を理解していないとしか考えられない。いずれかの法律で定めたことが、時代の実情と合わなくなってきたことを自ら認め、時代に合わせていくことが規制緩和の意味なのに、自らの不利益になることを付かれたからといって、その規制だけは撤廃しないでほしいと言っているとしか思えない。さらに日本レコード協会の会長の話もいかしている。「文化の担い手である音楽用CDなどの著作物商品は、価格が安定しているからこそ、コンテンツ自体の切磋琢磨があり、文化の向上に貢献しうる」と。全ての商品は社会生活なり暮しの向上に役立つものでなければならない。それは衣類・住宅・食品・雑貨...全てそうである。文化が大事だということは百も承知で、あえて文化だけがその除外の対象になっていることの不思議は、他の全ての業界の経営者が思っていることだろう。もともと再版制度の対象外となっていた商品を取り扱う業界なり、定価を撤廃した家電業界など、自らの努力で製品の質的向上と利益確保ほ既に両立しているではないか。再版制度の上に胡座をかいて、文化・著作物商品だけが除外されてきた甘い汁を廃止されることに対して、足掻いているとしか思えない発言だ。「価格が安定しているから」という言葉は「利益が安定確保されている」と言い直してもらいたい。真に文化の質的向上なり育成・保護を考えるのであれば、コンテンツの制作者、すなわち著作者そのものに十分な利益を還元する制度を考えるべきである。現在の音楽著作権法などは、真に著作者の利益を保護しているとは絶対に言えない法律だと私は考えている。 公取委の意見で、一定期間経過した著作物商品の非再版化や各種割引制度の導入、消費者に対して各種クーポンなどの発行によるサービスの充実を促しているが、それこそどこかの通信キャリアの広告ではないけれど「割引制度などではなくて、基本料金そのものを下げれば良いのに...」と多くの消費者は思っているはずである。賢い消費者は、そんな割引制度をうまく活用していると言うのは簡単で、そんな制度を理解するのは複雑過ぎてたまったものではない。価格が維持できないから利益が確保できないとかサービスが低下するなどというのは企業側の論理である。 再版制度の旨味...定価販売と返品の自由が無い...こんな商品を作る側の理論だけの制度が無ければ、商売の基本である売れるものを仕入れるという自由が、書店やレコード店にも与えられる。商店は私達消費者との窓口なのだから、私達だって、もっと自分の嗜好にあった商品を選びやすくなる環境が実現できるはず。そうすれば作る側も売る側も、もっと充実した商品企画を真剣に考えてくれると期待できる。著作物商品を扱う側には、こうした公取委の指摘を真剣に受けとめてほしい。 某協会の会長のような「うるさいハエがいなくなった」的な発言は絶対に謹んでほしいものだ。 (2001/03/24) |