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音楽は商品じゃない

 ここ数年のAOR系アルバムの再発CD化は異常事態。何でこんなものまでCDになるの?って感じで、珍盤・奇盤がどんどんCDでリリースされている。聞けば「セールスは期待できないんだけど、とりあえずリリースしちゃえ」とか、「一度に大量にリリースするとマスコミも取り上げてくれるから」なんて、理由にならない事情が聞こえてきた。CDはレコード会社が製造している商品だ。売れない商品をリリースするほどレコード会社は余裕があるとでも言うのだろうか。日本のレコード会社はごく一部のマス・セールスが期待できるJ-POPで食い繋いでいるのが実態。ここまでマーケティングが無くて、よくぞ会社だと言えるものだ。本気でこんな話を信じろというのだろうか。
 私達音楽ファンはCDを買うのはCDという商品を買うのではなくて、CDというパッケージに収められている音楽を買っているのだ。そんな「売れなくてもよい」だなんて、私達が愛する音楽をそんな扱われ方をして、それでよしだなんて死んでも言えない。リリースされるからには売れてほしいし、一人でも多くの人に聞いてもらいたい。20年近くもLPレコードを後生大切に聞き続けていたファンが、こんなに一時に大量リリースされて月の可処分所得をはるかに上回る勢いでリリースされるCDを買えずに指を咥えている現実を、果たしてどんな心理で見ているのだろうか。
 今のレコード会社の実情では、一度何かのきっかけでリリースされたCDが売れなければ、初回ロットの生産枚数がはければ以上終了で即廃盤、二度と陽の目を見ないアルバムとして扱われることは必至だ。私達の愛する音楽が、真っ当な評価を得られることもなく永遠に闇に消えていく...こんなことを許してよいのだろうか。確かにLPレコードのままでは、聞けるのは一部のマニアのみで愛好者の拡大は期待できない。だからといって、そんなぞんざいな扱いをされてまでCD化されることが、本当にその音楽にとって良いことなのだろうか。そんな珍盤を並べるスペースを確保するために、永久名盤として扱われるべき名盤が影でどんどん消えている。別のページで述べているように、廃盤制度が無くなれば話は別だけれど、廃盤になったアルバムの再販はめちゃくちゃ厳しいのが現実。好きで聞きこんでいたアルバムが一時に大量リリースされて金銭的な事情で購入できずにいて、そのまま廃盤に追い込まれていったら悔やんでも悔やみきれない。本当のファンは呆れ、新しいファンの拡大もままならない...こんなことは、AORが本当に好きならば絶対にしてはいけないことだと思う。煽るだけ煽ってAORを永久に葬り去ろうとしている不貞な奴が存在している....って言い過ぎか?。
 音楽を本当に愛しているのなら、商品としてのCDだけでなく、そこに収められている音楽そのものを愛してください。CDが売れないということと音楽の出来は決してイコールではないはずだ。今のまま商品としてのCDを売るためだけに奔走している全ての行為を絶対に許さない。
(2001/08/26)