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【スポーツ】ジャイアンツの目指す球界の盟主とは

 日本プロ野球を代表するチームは読売ジャイアンツであるとは自他ともに認めるところでしょう。私はジャイアンツ・ファンなのですが、今年のジャイアンツは正直「???」です。ペナントレース開幕以前から膨大な資金力を背景とした戦力補強を成し、戦う前からして「ジャイアンツの圧勝」を予想する評論家も多いなか、ここにきてようやくその戦力も機能して、今日にも優勝マジックが出るというところまできました。今朝の情報番組でも話題になっていましたが、「一塁・清原、三塁・江藤、左翼・マルチネス、投手・工藤・メイ...」これではどこのチームかさっぱり分かりません。決して清原や江藤、工藤などの選手が嫌いというわけではありませんが、それぞれが各チームで主力として活躍し、自らの権利として獲得したFAで移籍してきたのですから、何ら問題は無いのですが、12球団の主力を所属させてチームを編成して、それで優勝する...それが球界の盟主にふさわしい行為なのでしょうか。

 話は変るようですが、ダイエーの秋山選手が2000試合出場2000本安打という偉業を達成しました。過去のプロ野球史上、数十人しか達成していない大変な記録です。心から賛辞を送りたいと思います。そんな秋山に対して様々な人のコメントが寄せられていました...例えば工藤、清原、など。皆もとは黄金時代の西武ライオンズのチームメイトです。彼らが在籍していた頃の往時の西武ライオンズは間違い無く球界の盟主と呼ぶにふさわしかったと思います。数年後にジャイアンツに所属している(または所属していた)選手が何がしかの記録を達成した時に、「いや、彼は...」などとコメントがださせるジャイアンツの選手がいるのでしょうか。歴史と理念だけ崇高で実がともなったいない...そんなチームになってしまうような気がしてなりません。
 確かに今のジャイアンツの主力にも生え抜きの選手はいます。しかし仁志、高橋(由)、二岡などは全てドラフトでは逆指名で入団しているし、入団前は無名でも実力をつけて一軍に上がり、バリバリのレギュラーを獲った選手は....すぐに浮かびません(汗というか泣)。ドラフト制度、逆指名、FA...、そうした制度を批判しているのではありません。選手の意思を尊重することも大切なので、12球団をすべて公平に無差別に戦力を配分するなどもってのほかだとは思いますが、それでも今年の巨人のチーム編成は問題が多いと思います。

 例えばV9という偉業を成し遂げた頃のジャイアンツには、O・Nというスーパースターが在籍していました。彼らのおかげで出番の無かった控え選手達は、トレードなどで他のチームに移籍して出番を確保し、それぞれの地でそれなりの成績を収めていきました。またV9戦士として活躍した選手も、引退後にジャイアンツだけではなく他の球団の監督・コーチとして活躍していきました。本当の球界の盟主たるチームは、自らのチームの戦力を保ちつつも、他チームのレベルも上げていく...そうした、より高いレベルでの野球を実現するのに必要な人材を育み、他チームの手本となるようなチーム運営をしていくものだと思います。
 確かに今年のジャイアンツの戦力は強大です。他のチームを圧倒しています。それでも勝ち続けられないのが勝負のアヤだとは思いますが、しかし本当にジャイアンツが好きな人にとっては、あまりに他のチームカラーの付いた人が多過ぎるのは、正直釈然としません。勝つためなら何をやっても良い...これでは盟主の誇りが穢れます。確かに何をやっても構いませんが、それは例えば選手一人一人にコンディショニング・コーチをつけてみるとか、一軍控え選手の調整のための二軍と実力養成のための選手を分けた三軍制度を徹底するとか、徹底した選手管理と育成プログラムを確立するなど、お金のかけるにしても他にあるはずです。

 今のジャイアンツが目指している「盟主」とは、ただ戦力を確保して優勝する...ただそれだけだと言えます。そんなのは本当の盟主じゃない。金持ちオーナーの我侭球団、私物化したチームとしか言えません。日本の、いや世界のプロ野球に誇れるチームづくりを目指してこそ、本当の日本球界の盟主としての地位を得られるものと思います。
 強いジャイアンツが私は好きです。ただし、ただ強いだけのチームは、それがどこであろうと嫌いです。
(2000/08/20)


 ※他のチームの4番打者やエース級の投手ばかりを金で集めてきて節操が無いとよく非難されるジャイアンツですが、前年まで他のチームで監督してた人を招聘したタイガースは、ジャイアンツ以上に節操が無いと思ってますけど...。要はジャイアンツにしてもタイガースにしても、フロントがプロ野球チームをもつべき資質に欠けている...そういうことなのでしょう。




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