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【社会】まだ本質を理解されていないIT革命。

 2000年、世はインターネットだITだと大騒ぎです。いずれにしてもコンピュータを操作できないと、まるで人間ではないかのごとく暮しのあらゆる場面で問われているのは事実です。しかしインターネットは単なる通信回線にしか過ぎません。問題はその両側だということを忘れてはなりません。「両側とは?」。それは見紛うことなく人そのものです。コンピュータはインターネットで繋がる人と人とを結ぶ端末機器にすぎません。端末機器に搭載されるハードウエア、ソフトウエアはこれから時間を追うごとに進歩していくことでしょう。その進歩だけを取り上げて大騒ぎするのは止めましょう。無限に増殖する通信網( WEB )は、ありとあらゆる人・物・場面を繋げていきます。繋がれば繋がるほど私達の生活は確実に豊かになります。端末操作に不安を感じて「時代に乗り遅れた」と悲観することはありません。そこで何を伝えるか、いかに伝えるか、何を得るか...これも立派にIT革命の一端を担う重要な役割です。そこに価値を見出した者だけが得られる、本当に豊かな時代が既に訪れています。少なくとも私はそう思っています。

 という前段を踏まえて(^^;;)、本題に...。
 2000年8月12日付けの朝日新聞のくらし欄に、旅行業界におけるIT化の波についての記事がありました。ホテル、航空会社のインターネット展開についての紹介の中で、大変興味深いものがありました。旅行者という最終ユーザーとホテルや交通機関とを繋ぐ役割をしていた旅行会社にとって、国内航空券の8割以上が旅行会社を通じて販売(供給)されていたものが、航空各社のホームページを通じて利用者に直接販売される...記事によれば「中抜き」されることに対しての旅行業各社から不満があがっているというものです。旅行会社に何の恨みも私はありませんが(^^;;)、私に言わせれば何をか言わんかという的はずれのクレームだと断言します。改めて確認しますが、旅行会社とはチケットの販売代理業だったのでしょうか。確かに旅行会社にとってチケットの販売手数料収入は相当なものだったと想像はつきます。しかし旅行者側からすれば、その分だけ旅行代金が高くついていたわけでしょ。直接買えれば、それだけ安く入手できるわけだから、それに対して公に文句を言うということは旅行者に対して「何で俺達から買わないんだ」って吼えているのと同じに見えるのです。旅行者の本来の存在価値は、プロとして快適で安全で心に残る旅行の企画提案することにあるはずじゃないですか。交通機関のチケットや宿の手配はあくまで付随する業務じゃないのですか?。文句を言っている内容が笑っちゃうじゃないですか。「ネット割引の航空券を旅行会社のホームページでも取り扱わせてほしいと申し出ているが認めてもらえない...」。何という愚かな申し出でしょうか。航空会社としても¥1でも高い値段でチケットを買ってもらえれば良いに決まってます。旅行会社の中間手数料を省くから、結果的に身入りは変らずとも利用者に安価で提供できるとして設定した料金なのに、旅行会社のホームページで同じ料金で提供して旅行会社は手数料はいらないとでも言うのでしょうか。それなら話は別ですが、そんな訳はないですよね(^^)。供給側と利用者が直接繋がったインターネットの世界。同じ世界で生きようというのなら、本来の精神に立ち帰って、いかに良いプランを作るかに精力を注ぎなさいってば。

 さらにもう一つ。過剰なネット割引合戦にしかめっ面している某有名ホテルの支配人のお言葉。「電話で来た予約がインターネットに替わってもコストは下がらない...」。まったくもってコスト意識の無い発言です。電話は一人でかけられるのでしょうか。相手がいなければ成立しないコミュニケーション手段です。空き状況の確認や予約のための手続きは全てアクセスした側が自分でするのです。電話の向こうで対応しているホテルマンではありません。インターネットはコンピュータが相手をします。しかもコンピュータだと24時間稼動できます。ホテルだって並のシティホテルですら24時間対応していません。高級ホテルだって人件費はかかります。人がいれば光熱費だって空調代だってかかるじゃないですか。そんな費用を全て利用者に転化しているから、そんなサービスが可能なのでしょ。ここのホテルでは、そんな人件費は気にもならないほどの利益率を確保しているというのでしょうか。予約業務にかかるコストを少しでも削減して、夜11時代のルームサービス対応の厨房の人員を一人でも増やした方が、お客様に対してのサービス向上に繋がるのではないのでしょうか(この件については不満あります...^^;;)。安易に「ネットだから割引はしない」という姿勢は大事でしょうが、「コストは下がらない」という認識は直ちに改めていただきたいものです。

 自分でできることは自分でする。その分安く手に入るのであれば、誰だってそうします。自分でやっているのに値段が変わらないのなら、誰もしません。人にやってもらいます。出来なくて仕方ないので手数料払ってやってもらっていたのです。あらゆる場面で手数料商売をしていた業態は、手数料をいただくに値する付加価値を見出さなければ生き残れない...ある意味で真っ当なシステムになってきたといえるのではないでしょうか。どこに付加価値を見出すか...これが、これから生き残るために必要な知恵だと思いますが...。
(2000/08/12)




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