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【スポーツ】野球のオリンピック選手団でもめるプロとアマ。

 野球のシドニー五輪のアジア地区予選に出場する代表選手選考にあたって、プロ野球とアマチュア野球連盟とがもめている。それぞれ主張があるものの、お互いの論点がズレていて話し合いは実に醜いものになっているように思う。
 プロ側は、レギュラークラスの選手の代表入りを容認しているパ・リーグと各球団の意思を尊重するというセ・リーグと意見は割れている。大会の開催されるのが9月ということで、ペナント・レースも優勝を争う大事な時期ということもあり、優勝の可能性を強く残す球団とそうでないところでも主張が異なっていたりもする。7/17付けの朝日新聞によれば、各球団から提出された派遣可能選手からピックアップされたメンバーには、ヤクルトの古田捕手、ロッテ初芝内野手、広島の野村内野手、そして西武の松坂投手など、プロ球界を代表する選手の名前が見られる。
 球界の盟主を自認する巨人の渡辺オーナーは、過去のプロとアマの確執を踏まえて「今更プロ選手をオリンピツクに派遣しろというのは虫が良すぎる」という趣旨の発言を繰り返している。オリンピックそのものに対しての考え方にもよるけれど、アマチュア・スポーツの最高峰としての意味に慣れてしまった私には、プロ選手を出場させる意味には釈然としないものがある。しかし「日本の代表」としてチームを編成するのであれば、プロもアマも関係ないとする意見も理解できる。この野球界のゴタゴタは、オリンピックに対して日本がどう参加するかの世論の統一がなされていないところに原因があるのだろう。渡辺氏の主張の根底には、こうしたオリンピックに対しての認識があるに違いない。国を挙げての代表選手選考という視点があれば、彼なら巨人軍の選手だけでチームを作るくらいの勢いを見せても不思議ではない。そのくらい巨人軍の選手を愛しているのだから。一方で、スキーなどでアマチュア・スポーツに深く関わってきていた西武の堤オーナーの発言力が強いパ・リーグは、当初からオリンピックへの派遣に好意的だった。イの一番で注目の松坂投手を拠出すると公言した。今後は日本プロ野球が誇るオリックスのイチロー外野手などの動向にも注目が集まることだろう。
 いずれにせよ、できるだけ早くオリンピツクを「アマチュアイズムの最高峰の競技会」とするか、「国別対抗戦」と認識するかの世論の統一をはかるべきだと思う。世界の流れが「一流選手によるスポーツ競技会」との方向に傾いていることを踏まえると、おのずと結論は見えているように思えるけれど…こんなところにも国の指導力の無さが見えてしまう。
 気になるのは、同日付けの新聞には、プロ選手の派遣期間が短縮されたとあるけれど、挙国一致の最強チーム編成をめざすならば、事情はあるにせよ派件を決めた選手はできるだけ早くチームに合流させるべきたと思う。選手は一流だけどチームは二流なんてことがないようにしてもらいたい。

 オリンピックで日の丸が挙がると素直に感動してしまうことに、全体主義の台頭と危惧する声があるのは理解できるが、戦時中の日本が経験したナショナリズムは当時の軍勢力による歪んだ解釈であり、一意絶対の国粋主義とは断固違うとも思う。感動の大会になることを心から願う。
(1999/07/17)


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